眼鏡女子の威力

先日はお気に入りのひとつであるお店の店主の誕生日であったので
この時期、気の利いたお店が軒並み臨時休業しているところ
こましなものが買える道中にあるお店を探して
心ばかりのプレゼントを買っていきました。

コロナ禍のあおりをうけて時短営業、
カウンターの席も社会的距離をたもつために椅子ふたつずつあけて
という仕様ではありますが、相変わらず飲み物も食べ物もおいしかったです。

そこでふいと思いだした、2年半ほど前の、2017年末の話。

外国人の夫は、来日当初よりも日本語ができるようになり
日常会話はある程度できるものの、ビジネスレベルではなく
非常に優秀な技術者なのですが、彼くらいのレベルになると
プロジェクト・マネジャーになり、グループをまとめて顧客と交渉もして
スケジュール管理もできないと…となってくるのですが
日本語はできないし、性格柄、グループをまとめるとか顧客と交渉とかできない。

わたしが彼をなんらか売り込めればいいのですが
門外漢の分野で努力してみても理解できず、助けになれない。
能力があるため、何度かは職をうしなってもすぐ就職できていたのですが
ここ数年はいくら頑張ってみても、仕事がみつからない。

というわけで、そう稼ぎは多くないものの、わたしが大黒柱です。

だのに、それまで契約社員として働いていたところで
いまはもうだいぶ忘れ去られた感のある「2018年問題」、
5年以上勤務していたら、希望があれば無期限雇用に転換しなければならないというあれ…むしろそれで雇止めのひとが増えたという。
あのあおりを受けて、「ごめん、財源ないねん」と言われて
2018年3月末で契約終了ね。と申し渡されました。
その職場としては一応誠意をもって、できるだけはやくお知らせしようとしてくれたわけで
おかげで暗澹とした2017年の年末を迎えました。

これまでいた組織に関する有用な知識、経験があるけれど
そこに再就職するには、6か月のクーリング期間が必要ということで
そんな悠長なこといってられへんねん。

ほかで、いい年したおばさんで、事務経験とすこしばかり英語ができる程度で
仕事みつかるかなあ…と不安ばかりです。
そんなところに、知り合いのつてで、某京都の老舗仕出し屋さんの
おせち準備補助の仕事の話をききました。
だいぶ悩んだのですが、これまでの知識経験関係ない場所での、体力仕事のようなことを
自分できるか?ということを試してみたくなり、
家でうだうだしてるより働いたほうがいいと、12月30日の1日だけ、行きました。

結果、13時間の暖房のない場所での立ち仕事、
けっこう過酷な環境でもじぶん、できるぞ!
やろうと思えば、なんでもできる!と自信になりましたし
昔ながらの京都のお店のつくり、自分の好きな「裏方」の仕事
なかなか触れることのない京都仕出し屋さんの世界にちょこっとだけでもはいりこめて興味深く、意を決してやってみて、ほんとによかったと思っています。

そこでは衛生のために全身を覆う使い捨てのかっぽう着みたいなエプロン、
マスク、帽子をつけての作業で、昼過ぎ、ほぼ夕方ちかくにお弁当が出て
作業場の隣の空間で、こちらも暖房のないなか、震えながらいただいたのですが
そのときはかっぽう着マスクを外していたところ
それまではなんだか上から目線で「これは、これやしな」みたいな感じで
親切ではあるものの、ぶっきらぼうだった、業界のひとで
彼らが「助(スケ)」と呼んでる仕事しにきているひとから
それ以降、敬語で対応されるようになって

仕事が終わったあとに、冒頭のお店の店主、Jくんに
「こんなこんなで、マスクと帽子とったら思った以上におばはんだったのでしょう、
急に敬語になったわ~笑」
と雑談メッセージ送ったら、
「それは、彼があなたの美しさに驚いたのです。
眼鏡女子が眼鏡をとった途端、その美しさに周囲が驚くように
マスクをとったあなたの美しさに彼は圧倒されたのです。
男子には、そのように単純なところがあるのです」
と返しをくれてビックリしました。

もちろんわたしへの気遣いはあったのでしょうが、
ふだんそういうことを言うことのないひとで
なんなら、わたしがきれいと思ってくれてるようなそぶりもしてなかったので
(実際のところ、きれいとも思っていなかったかもしれませんが)
とてもうれしかったのを、いまでも覚えています。

という、どうでもいいけどわたしには大事な話でした。