「つけびの村」を読んだ

昨年から「note」に参加していて、「つけびの村」著者が書いた記事を読んで興味をもった。

note.com

そこで、いつものように京都市図書館のオンライン蔵書予約をしたわけだけれど
ちょうど人気がでた頃らしく、たくさんの予約者がおり、
ひとり2週間でこの人数となると、半年から一年くらい先か。
それでもいいやと、ほかの興味ある本を予約しては借り、時間を過ごしていた。

先週、ようやくわたしの番が回ってきたので受け取ってきて、3日ほどで読了。

正直いって、期待外れだった。

丁寧に取材してある。
文章も問題ない。
けれど、なにか違和感を感じる。

その違和感の理由を考えてみた。

おそらく、一番大きな理由はじぶんの考える「ノンフィクション」とは違ったこと。
フィクションに面白さを見いだせず、読むとすればノンフィクションという時期があった。
そのなかで、わたしの中のノンフィクションというのは
「著者の人間性、個人的な思いや事情を入れ込まずに丹念な取材をして構築するもの」
という定義になっていたと思う。
潜入取材とかルポだったら理解できるけれど、
この本は「私」が主人公すぎる、という印象に違和感があった。
しかしあらためてnoteにあげた著者の文章を読んでみると「ルポ」としてあげているので致し方ないか、と。わたしの好みでなかっただけで。
また、noteで共感を得たことで、書籍化は応援してくれた読者の期待に応えるもの、という部分が大きいようで、読者の視線を意識しすぎているというのもわたしの好みではなかったけれど、これは今どきの「オンラインで人気→書籍化」という形をとっているのだから、当然といえるだろう。

本の感想つづき。
本の最初の半分はnoteにまとめてアップしたもの、
後半の半分はnoteで人気が出たので出版化の話が出て、追加取材したもので
著者としては、事件のあった村の背景を丹念に調べて読者に伝える意図があったようだけれど
いかにも余分なつけ足しで、面白くなかった。

全体的に、取材で村人と交流して、村人側についたひとという印象がぬぐえない。
また、「うわさはあったが、いじめはなかった」と断言するのも
ちょっと単純すぎるのではないか、と思った。

一番興味深かったのが、村だけでなく、その周辺にも「変なひと」が多い、ということだった。
自作UFOのオブジェを設置するひとがおり、自宅に「魔女の宅急便」の看板を立てるひとおり(著者との会話もかなり怖い)
また、事件の犯人だけでなく、別件で放火をしていたひとがいたらしいなどなど、不気味さを感じた。

同じ事件についてあれこれ読んでみると、記事にするひとの立ち位置であったり、思いであったり、光の当て方によってひとつのことがらがいくつも違ってみえることを実感した。

自分の知りたいことを満足させてくれたという点では、移住アドバイザーが書いた記事のほうが犯人に丁寧にむきあっていて、私にはおもしろかった。

www.dailyshincho.jp

事件一か月後にアップされたこちらの記事もおもしろかった。

gendai.ismedia.jp

もちろん、「つけびの村」もよく調べてあり、現地に足を運んで丁寧な取材をしてあるとは思う。
けれど、もともと傍聴マニアから発したひとだからか?裁判についての冗長な語りがあったり、なんだか著者の芯がはっきりしない感じがどうしてもぬぐえず、よいノンフィクションとはいいがたいという読後感だった。