匂いの記憶は殴り合う

46歳のとき、23歳の大学生と一瞬、つきあいました。
3か月くらいだったかなあ。
10月に知り合いのやってるバーで知り合って、
2週間後に飲みに行き、その夜抱きしめられたけど
柄にもなく、ちょっと抑えてみるべきでは?
と思ったものの、結局生来の性格は抑えられず
翌日、彼んちに行って抱き合うことになったのでした。

それから、何回か彼んちに行ったり、
彼が参加している「哲学対話」みたいなのの例会に行ってみたり。
落ち着いていて奥ゆかしくおしゃれで、
高校までラグビーをやっていたという
サッカーとかそれ系の体格のひとが大好物のわたしにとってはドンピシャ
部屋はシンプルにセンスよく、遊びに行ったらおいしいコーヒー淹れてくれたりして

しかし、彼の卒論が忙しい…ということで逢えない日々が続き
卒論が終わったころなのに連絡なかったり
思い切って連絡とって会うことになったときにアヤシイことがあって
出かける準備してるときにドタキャンされ
これまでも、我慢強くないわたしが待っていたのに、、、
「わたしが逢いたいときに逢えない男に、用はないんじゃ!」
と、いつもの癖が炸裂して、切ってしまったのでした。

出会って2週間後に飲みに行ったとき、バーのカウンターで並んで飲んでいたら
「篠木さん、どんな本読みます?本の貸しあいっこしましょうよ」
と大学生らしく生意気なことを言うので
その次にあったとき、おばさんは真面目にも吟味した選りすぐりの3冊を持って行ったのでした。

その本は、いまだに戻ってきていません…
そして彼の貸してくれた、福岡伸一の本が、手元にある。
事情を知っている、出会ったバーのマスターに
「彼が来たら、本返して(マスターに託けて)くださいと言っておいて」
とお願いしたのですが、どうもばつが悪いらしく、以来一度もきていないようです。

あ~あ、選りすぐりの3冊だったのになあ…
と、1年半ほどたったこないだ、ふいに思い出して
「ところで、その選りすぐりの3冊て、なんだったっけ」。

一冊は、すぐに思い出しました。
「殴り合う貴族たち」
です。

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源氏物語」の優雅な世界で平安時代の貴公子は優雅で鷹揚で…
と思ったらどっこい、乱暴者のアホボンです。
いまでいうと、チンピラを引き連れて高級外車乗り回す、たちのわるい輩。
当時の道具として、牛車や石ころ、しかしいまより人権制度が整ってないから、身分の低いものは平気で殺されてしまうという…

「自分より身分の高いひとの正門を牛車に乗ったまま通るのは不敬」
のに敢えて挑戦する貴族、守るツワモノどもは正門にはっていて、投石する、そのアホくさい、しかし血みどろのタタカイも結構ひとごとで面白いです。
「あ~、むかしもいまも、アホボンはアホボンなんやなぁ~」
と。

はて、もう2冊はなんじゃったかと、
ない頭を絞るのですが、思いつかぬ。

わたしにとっての選りすぐりは、なんだ?
持っているなかで、なくなって欲しくないものは。

昔話にみる悪と欲望」も
ハーメルンの笛吹き男」も
江戸の性の不祥事」もあるぞ。

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そうこうしているうちに、「隼別王子の叛乱」がまたぞろ読みたくなり、
ついでのその出典となった古事記も…と、さして大きくない本棚を探したのですが、2冊とも見つからない。

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ああ、順序が逆だった。
そうこうしているうちにではなく、「隼別王子の叛乱」と「古事記」を探していて、もしかしてあの彼に貸したのかしらん、と思い、彼と貸した本のことを思い出したのだった。

これはぜったい、小人に隠されたなと
毎日毎日、何往復もして確認した本棚をスキャン(ざっと見)しておりますと
でてきました!
古事記」が昨日。
何度も何度もみていたところです。
ただ、重ねた本の間に挟まっていたので、見逃したというのもありうるのは認めよう。

けれど、今日みつけた「隼別王子の叛乱」!
これはもう、ほんとに何度も何度も何度もみた列に、堂々と目の前にありましたよ。
小人のしわざに、ちがいない。

で、ついに「隼別王子の叛乱」みつけたわけですが
それ探してるときに、ふいに思い出した、もう一冊は
匂いの記憶」だということに。

「鋤鼻器官」とも呼ばれる、鼻の孔の入り口からすこし奥にはいったところにあるその器官を、あえてもうすこし情緒のある「ヤコブソン器官」という名で呼んで、その働きを、その時点でわかっている科学でわかりやすく説明したもので、なかなかに興味深かった記憶があります。ヤコブソン器官が壊れて、「鼻がきかなくなる」(においと感知していないけれども、気づかずに判断している「におい」を感じ取る能力がなくなる)から、安易に鼻を整形しないほうがよいのですって。

二冊とも、選りすぐっただけあって、もっかい読みたいなあ。
もっかい、買おうかなあ。
そして、三冊目は、なんだったっけ。

ちなみにいまは、知識経験ゆたかで面白く、あれこれの相性も合い、世界を広げてくれる、62歳の彼と仲良くやっていますのでご心配なく。

 

※これは2019年5月にnoteに書いたものです。noteではいろいろ書いていますので、ご興味のあるむきはぜひ読んでみてください。