ロシア人のおそるべき楽天家ぶり

ロシア人の夫と一緒になって20年以上たつのだが、ロシア人の適当さにはほとほと呆れ感心している。

数家族でキャンプにでかけると、待ち合わせの集合時間から1時間以上たってから集まりはじめる。
食料などの用意はしていない。
道中、お店に寄ってみたり、現地に着いてからのんびり買い出しに出て、のんびり準備をはじめる。

「何時に集合して、行くのにこれくらいかかって、準備はあれとこれして」
などと計画的な日本人のわたしはイライラしたものだった。
しかし、余暇というのは日常のせかせかを忘れるものであるのだから、これはむしろ正しいと思う。

しかし、余暇だけでなく、ロシア人は行き当たりばったりを楽しむ人々なのではないだろうか、と彼らの計画性のなさを疑うことが節々であった。

自分のなかで最大だったのは、知人の4歳のお子さんを預かってロシアに行ったとき。
「空港でおばあさんが迎えにきてくれる」という情報のみで、おばあさんを含む、その子のロシアの親戚の住所、電話番号等一切情報がないことを機上で知ったことだ。どころか、日本にいる親の連絡先も。
「空港でおばあさんに会えなかったら、どうするの」
「ぼくたちで育てるしかないだろうね」
さいわい、おばあさんとは空港でめぐりあえた(声かけられたのに気づかず、夫は素通りしようとしたけど)。

現在、コロナ禍でロシアへの荷物が発送できない。

それが判明したのは、モスクワに住む従弟が日本での買い物を夫に頼み、
それをEMSで送ろうと郵便局に持っていってからだった。
ウェブにはその情報が載ってなかったので、それでロシア人が適当すぎる!と責めるつもりはない。
ただ、わたしだったらもうすこし事前に情報収集するけど。

それを従弟に連絡すると
FedExやDHLは高いから、兄さんが持ってきてくれ(航空券のほうが安いとのこと)」

で、夫とわたし、あたふたと適当なスーツケースあるかとか
衣類は最低限でこれこれかな、ジーンズは新しいの買ったほうがいいかも。
と家のなかをわさわさしだしたけどふと気がついて

「そもそも、ロシア行けるの?」
「直行便はないけれど、経由していける便を従弟が見つけてる」

そういや、近いうちわたしの会社の社長が社用でアメリカ行くし、海外渡航も最近は大丈夫なんかな?と思いつつ、念のため調べてみる。

夫は、ロシアの父親が危篤の際に駆け付けようとしてパスポート引っ張り出したら期限が切れており、ロシア国外での期限切れパスポートの切替はおっそろしく時間がかかり(用意しなければならない書類もややこしく)結局、お父さんの臨終に間に合わなかったといううっかりさんだ。

さて調べてみると
「外国人は特段の事情がないと、日本に入国できないんだってさー。
ロシアには行けるけど、日本には帰ってこれないみたいだね、あはは」

しかし、永住者などは入国できるらしい(夫の在留資格は「永住者」)。
けんど、出国の理由が「従弟に頼まれたもの渡しにいくため」と馬鹿正直に言わんくても、「親族訪問」ていまこの時期に?喫緊の事情でもないのに、それこそお父さん死にかけとか。それ認められるんだろうか。

「それに、日本に入国したら、2週間自主隔離しないといけないんだってよ。空港からは、公共交通機関利用したらあかんらしいし。どうやって帰ってくんの?歩いて?何日かかるかなあ」

「自主隔離は嫌だ。それにそもそも、ロシアにそんなに行きたくない」

故郷って懐かしいもんだと思ってたら、故国にはたまに帰ってみたいのかと思ってたらそうでもないみたいでびっくりした。日本の生活のがよほど快適なんだって。まあ、友達や従弟親戚とはSkypeでめっちゃしゃべってるから寂しくなさそうだしね・・・。

そんなこんなで、ロシア渡航はボツ。

あれこれ調べて、結局FeDexで出すことに。
四苦八苦してWebで登録、支払い用のクレジットカード情報も。
そうして無事、荷物はピックアップされた。

細かいことは省略したけど、ここにくるまで、そもそも商品購入の時点からいろいろとめんどくさくてわたしは早々に戦線離脱して、夫が頑張ってあれこれやっているのを横目で見ていた。

さてそろそろ、荷物届いたかな?という頃に、従弟から連絡があった。
「ロシアでは現在、個人宛の貨物は受け入れてない」
とのことで、そのまま送り返されるんですと。
「で、従弟はその料金だれがもつの?と言ってる」と夫。
「うんうん」
「荷物を運ばなかったということは、彼らは仕事を完遂してないのでFeDexが払うべき」
そんなことないと思うけどな~、彼らのサービスに対して支払ってるわけで…ロシアで受け入れてもらえないのは不可抗力だったから…。
と思いつつ、その問題には触らんとこうと思った。

それから1,2週間たち、夫はまだ別の方法で送る道はないもんかとジタバタしている。

そんな昨日。
どよ~んとした顔で
FeDexが僕のクレジットカードから6万抜いた、、、」
「そうでしょうよ、無料というのはおかしいと思った」
「彼らは仕事を完遂しなかったので、料金を請求するべきではない」
「送り状にサインしたんでしょ?事前にTerms&Conditionsちゃんと読んだ?」
「読んでない」

それから二人でWeb情報閲覧…。
「荷物の遅延」や「損壊」についての条項はあるけれど、「配達できずに発送人に返還」についてはみつからない。ただ、「料金の返却」の項目で、現在COVID-19により、遅延賠償などは一切なし、救済方法はなしだとか、相手国の状況により不可抗力の場合責任ないと読み取れる箇所があった。夫はいちおう、クレームを申し立てたがどうなるやら…。

「状況は悲観的だと思うね。お金は戻ってこない気がする」とわたし。
「ぼくもそう思う」と普段楽天家の夫がめずらしく。

ま、これでもちょっと事前にいろいろ調べるとか学んだろ、
わたしはお金失ったわけではないのでほっとこ~、
と思ってたら、このことでわたしが不機嫌になったとでも思ったのか
夫がしおしおと寄ってきて抱きしめ

「昨日エッチしといてよかった~、きょうは気分落ち込んでるから、とてもそういう気になれなかったろうから」

え、そこ?

やっぱり、ロシア人は楽天家だ。