新元号が万葉集からとられたってことでにわかに万葉集が人気になっていますが
と名を挙げられていて、額田王好きなわたしは、柿本人麻呂を差し置いて最初に名前が挙げられていたのがうれしかったのでした。
先日、職場で
「歴史上の人物、だれが好きですか」
という話になったとき、
「額田王です」
言うと、おそらく戦国武将しか知らない、織田信長か豊臣秀吉か、程度の話をしていた男子は
「誰ですか、それ?」
状態で
「大海人皇子の愛人で、子どもも生んで、そのあと中大兄皇子の恋人になって」
と説明したものの、そもそもそれ誰?って話ですよね、彼らには。
「のちの天智天皇、天武天皇、と言えばよかったと、あとで後悔したのですがいや、そう言っても彼らには通じなかった可能性はいなめない。
でも、正直万葉集のことはそれほど詳しくなかとです。
といって、それよりすこし、読んだ程度でこちらも詳しいとは言えませぬが
記紀に題材をとった、田辺聖子の「隼別王子の叛乱」がだいすきです。
叙事詩のような語り口で、ひじょうに感性、こころをゆさぶられます。
あとがきにみつけたのだと思うのですが、自分の万葉集を書きたかった、これは古事記から題材を得た、と読み、所持していた古事記のそのくだりを探してみると、
「大王が女鳥姫をめとりたいと思い、隼別を使者としてその思いを伝えにいかせたところ、『わたしはあんなジィさんと結婚するのはいやよ、あなたみたいな若くてうつくしいひとがいいわ』とはっきり言ってふたりは一緒にになり、ふたりは大王に背いたということで殺されてしまう」
といったような、数行の記述から、あんな素敵な長い物語を紡ぎあげた作家の力量に感服するばかり。そして、大王からの使いをきっぱりはねつけて「あんたのほうがいいわ」という姫の自由さ、奔放さ、「それもそうだな」と自分のものにする王子の大らかさといおうかなんといおうか、そしてそれを記紀に残すというのが非常に興味深い。
いろんなびっくりや感動がつまったこの本、古事記とともに今回この記事の参考にしようとさして数多くない本が並ぶ本棚を何往復か、探してみたのだけれど、みつからない。あんまり素敵な本だから、酔っぱらった際にだれかに強く薦めて持たせたかしら。しかし、「古事記」まで持っていくひとはいないだろうから、いずれこのちらかった部屋のどこかにうずもれているのだろうなあ…。