読み応えのあった「葬送の仕事師たち」

阿部公房の「カンガルーノート」って、「考えるノート」がロレって出来上がったのかなと、今頃になって思いついた篠木マリですみなさんこんにちは。

相も変わらずあれこれと、平行して買ったり借りたりした本を読んでいるのですが
昨日読了したのは「葬送の仕事師たち」井上 理津子 (新潮文庫

葬送の仕事師たち(新潮文庫)

葬送の仕事師たち(新潮文庫)

 

 葬儀関係のいろんな業種を、その仕事に関わるひとびと個々の性格や背景まで丁寧に取り込んだ、読み応えのある一冊です。

数年前に「エンジェルフライト」という、外国で亡くなった方、日本で亡くなった外国人を飛行機で送る仕事関係を丹念に取材した本で、エンバーミングについて知りました。 

 ずっと以前から、法医学者のなんたらいうのも何冊か読んでいるし
ここ数年は、特殊清掃(死体のあった現場の清掃)関係の本やら記事を読んで
死んだらどうなるか…どういう処理が必要か…という知識を得るとともに
「死に関する仕事をするひとびとの目を通じて、いろんな人生を見る」
こともしている気がしています。

葬儀関連の資格を得るための学校取材からはじまり、葬儀会社、必要な手続き、修復、湯灌、清拭、エンバーミング、墓、火葬等、死んでからお葬式を挙げて火葬までの変遷、現在の事情、そしてそれに関わる会社、ひとびとそれぞれ(やはり会社や個人によって思い、取り組み方が違う)を丁寧に取材していてわかりやすく、読みながらつい中座して夫用やペット用の骨壺や遺骨グッズをネットで探してみたり、本をぱたんと閉じて「夫が先に死んだら(年齢的には夫が先だし、本人もそうであることを希望)無宗教だし、『死んだら終わりと思っている。葬式などの死後のことは残されたひとのため。自分はなんでもいい』と言ってるし、親族はロシアだから間に合わないから(エンバーミングして一番近い従妹が来るのを待つとかいう予算はないと思われ)一番簡単な直葬かな、そうすると京都ではいくらかな」などと考えたり。

もうすこし若いころは、死だのお葬式関連だの遺言だの考えると、近くにやってくるようで不吉な気がして触れるのが嫌でしたが(そういう人も多いと思います)、だんだんそうも言ってられない年齢になってきて、いざその時がきてパニックにならんように、いろんなこと調べとこっと、と考えを切り替えて遺産(といってもほぼなしですが、そんなんでも骨肉の争いになったりするケース多いらしいんで)についてはすでに夫や子どもに伝えてあるし、夫が先に死んだ場合の相続についても調べた。10年以内にやってくるであろう猫とのお別れについても覚悟して、京都のペット火葬だとか、遺灰の扱いについて調べたりしている。こないだ可愛い骨壺眺めてたら、「また大好きなお買い物?」と夫に訊かれて「猫の骨壺選んでる」と言って引かれたけど。

いつかはやってくる死について考え、準備することで、前よりも愛する夫や猫との一日一日を大切に、幸せを感じながら過ごせるようになった。