ファッションについて思ふこと

先日は前職でフランスに出張したとき、現地のプチプラで購入したワンピースを着てご出勤。黒に襟元にシルバーのビーズが縫い付けてあるものです。それに前日も着た白いシャツをジャケットのように羽織って、靴はネットで1000円くらいで買ったシルバーのぺたんこ靴。

その前の日はH&Mで199円で購入した目の覚めるようなカーマインのジャージ素材ノースリー部ワンピをトップ使い。アクセントは大きめのアフリカ製木彫りの人顔ペンダント。下はTOPVALUEの七分丈デニム。それに1000円くらいで買った白いシャツを羽織りました。足はさいきん買った「ミサトっ子」の草履、和柄

ふだんはそれで許されるので仕事にも小汚いTシャツにジーンズ、ノーメークで出かけたりするのですが、数日間は雨の予報なのでワンピース。雨の日は撥水性のよい生地のスカートやワンピースを着ることにしています。デニムを着ていて雨に濡れるとなかなか乾かなくて不快で、足が濡れた状態でいるのが極端に嫌いでもあり、一日それで過ごしたら風邪をひきやすいからです。

近所の買い物から河原町でのお買い物まで、ノーメークで小汚いカッコから、きちんとメイクして小綺麗な恰好まで、気分と目的によってさまざまないでたちででかけるのですが、なんだかんだ言ってひとは袈裟で判断しますから、やはり美しげな恰好をすると、とくに百貨店系での対応が目に見えて違いますね。

このプチプラワンピはあまり着ていなかったのですが、先日久しぶりに、今日のように白シャツジャケット使いスタイルで出かけるとなんか「ええもん着てるな」的な視線を感じて不思議に思っていたところ、ある時ネットで某高級ブランドでこれと似たデザインのワンピースが売られているのに気づきました。それから注意してみると、そのブランドでなくても、似たようなデザインのワンピースが、セールであっても数万円で売られているのを発見。
「ふふふ、これは3000円くらいで買ったのに。しめしめ」
そして、白シャツと合わせるとぐんとマダム感があがるのです。

我ながら、衣料品の買い物は上手だと思います。
自分に似合う色、スタイルがわかっているので、ネットで1シーズン、2シーズン落ちの、もともとは数千円だったものが1000円前後になったものを買っています。それをあれこれ、組み合わせて。普段着、仕事着は庶民のわたしにはこれで十分。お出かけ、夜遊びの服はお気に入りのブランドがあり、少々よいものを買っています。

高級ブランドのものは、たしかに素材、デザイン、つくりがよいのですが、いかんせん高すぎる。それにはブランド代も込みだから。いわゆるOEMも多いですから、自分のセンスを磨いて無名でもよいものを買うようにしたいものです。

「菊乃井」の村田さんの本に「うちの店では3万円あれば十分おいしいものができる。むしろ、それ以上かからない。ところが、必要以上に高いものを希望するお客さんもいる。そうやって、東京では5万もする設定して、お客はそれを喜んでいる」的なことが書いてありました。

自分に審美眼がないから、間違いのないブランドものを買って女性にプレゼントする、という知人がいました。自分の感性に自信がないひとは、ブランドで「安心」を買っているのですね。そして、「これだけお金をかけた」ということに安心、満足している。

以前つきあっていたやくざの彼は、いろんなものを知っていますから、
「高級ブランドの偽物買うより、無名の日本製のもの買ったほうがよほど質がいいよ。日本はいいもの作ってるから」
と言っていました。

日本の優れた技術や伝統工法を使ったものが高級ブランドの素材として使われているというのも、よくききます。

先日、奈良の窯にお邪魔した際に、次のような話をききました。
とある伝統工芸に携わる、業界では高名な方のところに、誰もが知っている高級ブランドがその方の作るものを採用したいと話をしに行ったそうです。どうやら、話をしにいったひとは、世界に誇る高級ブランドだからと、上から目線のようなところもあった様子。
話をきいた工芸士の方は手をとめて、
「なんでわしがおまえとこの仕事してやらなあかんねん」
と言ったそうです。
あのブランドでわたしのものを使ってもらえるなんて!という反応を期待していた、これまでそういう経験ばかりであったろうそのブランドの方の驚きや、いかばかりか。
その話を聞いたわたしたちは、口々に「カッコいい!」。

「その話は、きいたことがあります」
と同席していた人が口をはさみました。
「その方の息子さんによると『わしは大人だから、話だけはきいてやった』とおっしゃっていたそうです」

よいものはある程度の値段はする。それには理由がある。よい素材、それを加工する工程、デザインのセンス、縫製や塗り、組み立てうんぬん制作の技術。それについての値は払いたいと思う。よいものを見つけて、適切な価格で手に入れたい。そしてそのよさがわかる経験を重ね、感性を磨いていきたいと思っています。着るものも、食べるものも。